映画「北のカナリアたち」を観てきました

松田龍平が出ているので行ってきました。あらためて書くことでもないですが、私は「龍平が出てたらとりあえずどんな作品でも観る」という感じのスタンスをデビュー時からずっとやっている類の龍平ファンです。

そういうわけで今回は吉永小百合主演の「北のカナリアたち」です。内容は以下。

日本映画に新たな歴史を刻む、大型プロジェクト。東映創立60周年記念作品として製作される『北のカナリアたち』。
日本最北の地、稚内サロベツ利尻島礼文島を舞台に、かつてない衝撃と感動の物語が描き出される。
北海道の小さな島の分校の教師と6人の生徒たち。響き渡る子供たちの歌声は島の人々の心を癒していた。そんな時に起きてしまったあの事故―。全ての人たちが引き裂かれ、楽しかった思い出と共にそれぞれが後悔や心の傷を抱えたまま長い年月を過ごしていく。20年後、ある事件を機に先生と生徒たちが再会し、今まで心の奥に凍てついていた"真実"が溶けるように明かされていく。


…こんな感じで、個人的には、龍平が出ていなかったらまず観ないであろう類の映画でした。映画館は、エヴァQを観にきたのであろう人がいっぱい。その中の一部がこの映画目当て。ちょっとだけ年齢層高めな感じの客層になっていました。「ここにいるおじさまたちは皆サユリストなのか…?」とか思いながら、シートに着席。鑑賞。


「龍平が出てるから」という他には何も考えず観に行ったので、事前情報をほぼ持ち合わせておらず、したがって期待も何もしてなかったのですが、その割には最後までじっくり観ることが出来たかな、というのが観終わった直後の感想。じわっといい映画だったかな。まぁ、たまにはこんなのもいいかも…?といった具合。

吉永小百合はさすがにお年を召してらしても美しいし、森山未來はいい芝居をするし、満島ひかりは演技も好きだけど歌声もいいし、宮崎あおいはちょっと鬱陶しい感じの役がハマっていてなかなかだし、龍平はココ最近の作品ではちょっとなかった優しい感じで、この役のためにすこし体重を増やしたこともあって、微笑ましい雰囲気に。

柴田恭兵仲村トオルのあぶ刑事コンビについては、ちょっとこの映画にこのふたりこういう役で起用って、なんというか、渋さとアダルティ感お腹いっぱいっていうか、ちょっと胸焼けする感じではあったんですけど、まぁ、お芝居は良かったんじゃないですかね…という具合で…。

ラストで泣いてるぽい観客も数人いたかな。考えさせられる話といえばまぁそんなテーマなのかなという気もするし、木村大作の撮る北海道ロケの映像は文句無しに美しく壮大だし…。作品としてはさすがに真面目に作ってあるのが分かって、昔すごく頭にきた某作品に感じた「名作ぶってんじゃねーよ」というような感情も特には覚えなかったのだけど…


でもなんだろう…。「特に私好みの話ではなかった」という点を差し引いても、何か私の中で、感想がしっくり落ち着かない。この映画を観にきた人たちって、何が目的で観に来たんだろう?この映画を観て、何を得た感じで帰っていくんだろう?そもそもこの映画のテーマってなんだろ…と、映画を観終わった後も、自分はその辺が全くわからなくて、なんだろうこの気持ち…状態。作中のキーワードや人間関係に思いを巡らせますが、どれも「この映画=コレ!」というほどのインパクトがないんですよね…。

そしてなんとなくモヤモヤしたまま帰宅して、買ってきたパンフを開いて、インタビューなどを読み終えたところで、やっと「あぁ、わかった…」と、自分の中でストンと何かが収まる感じがしました。

この映画の一番大事な点は、映画に出てきた色んなキーワードでも、人間同士の関わりでも、美しい映像でもなく、


吉永小百合



それです。

良くも悪しくもそれだけ。



いや、悪しくはないか。そういう映画として作られてると思いますよ。だとしたら成功なんじゃないかしら。この映画の、良いんじゃない?と思う点はすべてが吉永小百合のための演出になってます。別に変な嫌味ではありませんよ。ほんとにそのまま。いわば吉永小百合のPV。いかに吉永小百合を堪能し、消費するかを突き詰めた映画。


あー、納得がいった。作品をけなしてるわけでは全くないんですが、伝わるかしらこの感じ。ただ、サユリスト世代でもないし、きれいだなとは思うけど彼女に特別思い入れがない私のような人間が観ると「いい映画だとは思うけど…」みたいなモヤッと感が残るのではないかなぁ。

小百合さん大好きな方は観にいくと良いと思いますよ!木村大作さんの撮られる北海道の大自然の中の吉永小百合は美しい。いや、他の役者さんもいいけど、小百合さんがもってってしまうので…。唯一引っ張り切られず頑張ってたのは森山未來くらいかなぁ。

何にせよ、結構いい役者さんを揃えても、やっぱり最終的に「小百合さんのために」な感じになるし、またそうなるように作品を仕上げても嫌味がないほど、引力がある女優さんなんだなと思います。

「こういうジャンルの映画があるんだなぁ」としみじみ感心してしまった作品でした。

それにしても過酷なロケだったようで。マイナス30度の北海道!龍平、また雪に埋められなくてよかったね…!(参考:劒岳 点の記)