大河ドラマ「龍馬伝」第20回 収二郎、無念

脚本と武市についての色々。



主要キャストのインタビューだけ読んだ状態で放置してた、NHK公式の「龍馬伝 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー) 」を、そういや福田さん(脚本)のインタビュー全然読んでない、と思って、読んでみました。で、そこで福田さんが「武市半平太だって、のちの世から見れば愚かなリーダーかもしれないけど」云々の発言をしてらして、「あー、そうか、龍馬伝の武市はやっぱりそうなんだなぁ」と思ってしまったのであります。


で、まぁ、全てを史実通りにやれば、ドラマとして面白くなるとも思わんので、まぁ、その辺は、毎年だけど、しょうがないかな、それでも龍馬伝は魅せている方なんじゃないかと、そういうつもりで見ていたのですが、「脚本がそーだからしゃーないじゃん」は、事実ではあるんですが、そこで全て思考停止するのも良くないなと思いつつ、何故ここまで武市sageなんだろうな?というのを一応考えてみたわけです。


前半の主要登場人物が、龍馬、弥太郎、武市なのは間違いないとして、龍馬は主人公なので勿論引き立てなくてはならない。弥太郎は、タイトルが龍馬「伝」な通り、この話自体が、弥太郎が語るストーリーであるという構成なので、いわばもう一人の主人公。(勝先生が言ってた、こっちの面からみれば…云々はここにもかかるのかもしれません)弥太郎もずいぶんと落とされているイメージがありますが、彼は後のサクセスストーリーにつながるわけですし、「上がったり下がったり、上がったり下がったり!」はしているけれど、彼が人道的に「間違ったこと」をしている描写はない。


で、武市についてですが、主人公の龍馬を相対的にあげるためだけに、落とされている部分はあるんだろうな…というのが、ここまでは今までぼんやり思っていたことであります。


ただ、ここまで落とす必要はあるのか?と。もっと武市のやったことを評価する描写があったとしても、龍馬の価値って別に下がらないんでは?という疑問を持ってみる。どうせ武市は途中で退場してしまうわけだし、必要以上に武市さんの実績というのがスルーされている感は否めない…。


武市が自分で言ってしまっていたけど、「攘夷決行」の回で、龍馬に対して「何もしていないお前が〜」的な事を言っていたけど、あの時点では武市さんの方がよっぽど働いているわけですが、長州とのやりとりや京での働きはあまり描かれていないし、容堂さんとの関係もああいう描かれ方で、武市のやってきたことというのが、視聴者にはイマイチ伝わってこない(人斬り以外)。描写時間の配分については、主人公じゃないので省かれても仕方ない、とは思います。ただ、フォローの仕方があるとは思うのよね。武市関係のフォローって、武市が自分で言っちゃうか、龍馬や土佐勤王党の身内的なフォローだけなんですよね。もしくは、武市の心の弱さを出すことでの「人としては悩んでいる」フォロー。


武市の仕事に対しての評価を、極力少なく、ていうのはやはり故意に意識しての脚本だと思うんだけど、それが、何故か?て考えると…。やっぱり「人を殺しているから」なんだろうなぁ…と言うところに行き着きます。何でここまで武市が落とされるのか?という疑問に対しての、今更描く必要もないんじゃないのかっていうくらいの、安易な答えではありますが。でも、やっぱりそうなんだろうなぁ。戦国時代の合戦とかで人を殺めたわけじゃなく、暗殺の指示とかそういう殺し方だから、かな〜。


武士の世から、現代に繋がる大政奉還という流れを作った、ということで、更には基本的には自ら進んでの人殺しをしていない龍馬を主人公としているわけですから、その辺の対比が必要と判断しての脚本なのかな…と思っています。


武市さんの仕事を評価する=人斬り(暗殺)の正当化となるので、真っ向からはそういう脚本を描けない、ということなら…そのあたりに、限界を見た気がします。NHKの限界なのか、大河ドラマの限界なのか、福田さんの限界なのかは分からないですが。今後、武市の功績のフォローは、武市の武士、侍らしさとか、人として、ていう部分@牢獄からしかないんだろうなぁ、とやっぱりそれは残念ではありますねぇ。龍馬伝が、武市さんの物語じゃないというのは分かっているにせよ、演じる大森さんが割と思い入れしてるっぽい(TV stationのインタビューにて)&熱演なのを見ると、寂しい気持ちはありますねぇ。


熱演といえば、収二郎の宮迫も良かったですね。「顔芸やん!」と思うシーンも多々あれどw 牢獄〜切腹のシーンはやはり上手かったと思いました。



しかし容堂さんはところてん食べたり、クワガタと戯れたり…もう容堂様から目が離せない…。ちなみに容堂さんのところてんチュルチュルと、横井小楠さんの豆(?)ポリポリ見て、ハゲタカの飯島を思い出したのは私だけではないはず…。飯島さんの梅干し(映画)は、わざわざ音が出る食べものの方が感じが出ていい、と中尾さんがおっしゃってましたが、それと同じ演出かな〜と、勝手に思ってます。