映画「孤高のメス」


龍馬伝の感想も最近書いてないですが、公開になったみたいなので、試写会で観に行った映画の感想でも。最初に断っておくと、私はこの映画見てかなり腹が立ったので、あまりいいこと書いてませんので、なんというか、ご了承ください。あと、ネタバレあります。


試写会招待のハガキをいただいたので、予備知識も何もなかったのだけど、堤さん主演かー面白そうかも、と思って観に行きました。なので、原作は全然読んでおりません。




感想なんですが…。これまで、駄作もいっぱい観てきたけど、正直言って、久々に怒りを覚えるレベルの作品に久々に出会ってしまいました。ある意味丁寧には作ってあるので、「駄作」といっていいのかどうかははばかられますけれども。でも、映画が始まってから「あー多分こうなってこうなって、こうなるんだろうな」っていう起承転結をかなり細かい部分まで想像出来て、その通りにしか映画がすすまなかったらどうしますか…安心感満載のお約束といえば水戸黄門とかですが、黄門様だってもっとピンチに遭いますよね…。


映画紹介を見ると、「患者のたらい回しなど現代の医療問題に鋭く切り込む衝撃的な医療ドラマ。実際に医療に携わる大鐘稔彦の同名小説を基に、地方の市民病院に勤務する外科医が旧弊な医療現場で困難な手術に立ち向かうさまを描く。」とのこと。まぁ、医療サスペンス!とかではないので、展開が全く想像出来ないようなスリル&サスペンス!といったものを、この映画に求めてはいけないのだろうけど…。それでも。


それなりにトラウマを持ってるらしい天才外科医がレベルの低い片田舎の病院にやってきて、天才ぷりをみせつけてサワヤカに去っていくだけの映画です。それだけです。他に何も起こらない。脳死患者からの肝臓の移植をやる、というのが(ちょっと古い時代の話なので)当時は違法で、それがまぁ映画の中で一番の問題になるのですが、どっちの家族からもお願いされてる立場なので、違法という以外に障害はありません。手術も、難しい手術らしいですが、天才外科医なので手術中に問題は何もおこりません。天才で熱血なので周りのスタッフも熱心に手伝ってくれます。何が孤高だったんだろう…。こざかしい脇役もうろちょろしますが、最終的に制裁をくらうので問題ありません。


患者のたらい回し問題、現代医療の問題に鋭く切り込むとか、形式的になぞってエピソードとして盛り込んだ感アリアリで、ごくごくあっさり、それでそんな表現されたらたまらない……。地方病院の問題を描いた?カリスマの医者がいたらなんとかなるもんだと思ってますか…??


最後のオチ観た瞬間なんか、もうキレて映画館出てしまいたかった。オチですらひねれないのか!という怒りで(笑)。


これは、何なの?予算は多くなかっただろうけど、それでもある程度お金をかけて、いい役者さんも使って、こんな作品作ってるって…本当に信じられない。こういうの言うと「またまたぁ」だけど、今回は確実に言える、「こんな脚本なら私でも書ける」!「こういうの書いときゃいいでしょ」のフルコースでそれ以外何も出てこないんだから……。日常に刺激が要らない人にしか需要ないんじゃないのか、この映画は。


これが、ハートウォーミングな片田舎の病院の物語、的な売り方をしているなら、私は何もここまで腹が立たない。ものすごく地味な話で、いい話にしか書いていないから、当然いい話。基本的には皆救われて幸せになったしね、悪役以外。とてもとても安心して見られる映画です。堤さんも、夏川さんの演技も丁寧だった。手術シーンがウリとのことだったけど、それも良かった。


では、何に腹が立っているかというと。まず、脚本について。最近あった脚本がクソな作品といえば、映画じゃないですが、例えば去年の大河の天地人とかありますよね(言い切ってやった…)。あれはほんとにうんこでしたけど、もう突き抜けてバカ脚本だったので、もういっそそのくらいまでの方が良かった。いや、よくはなかったけど(笑)。


それに比べて、この作品の、「現代の医療問題に鋭く切り込む衝撃的な医療ドラマ」!といって、現在の邦画の代表のひとつ、というような顔をして紹介されながら、脚本は「及第点しか狙ってませんから」という匂いがぷんぷんの、この、意識の低さ。「制作側のチャレンジが何一つ感じられない」、私の怒りは、この一点に尽きる。


原作への愛はあるのだろうか?正直、堤さんの役ですら「もっとちゃんと背景を描いてあげればいいのに」と思うほどの薄っぺらさ。せめてもう少しトラウマの背景を具体的に作り込んであげたり、もうちょっと苦悩の面も描かれていたなら、いい面が際立ったのに、なんというペラペラなヒーローに仕立て上げられていることか。


こんな作品は、ある程度役者さん揃えてテーマを決めれば、正直誰が作ったってそれなりのものが出来る。自分たちにしか出来ない作品を作ろう、と、制作陣は思わなかったのだろうか。少なくとも私には全く感じられなかった。平均点、及第点、そこそこ…。良い意味でも悪い意味ですら、何も突出したものがなかった。


こういう作品を見て、「やっぱり邦画はつまらない」って言われることがあったとしたら、それが一番悲しい。


ちなみに小説は売れたみたいなんだけど、冒頭で書いたように、私は読んでいません。アマゾンでざっとレビューを見ましたが、結構何冊か出てる話らしいので、小説ではもっと細かく色々書かれているのかも。でも、もし小説が良い作品であるなら、小説ファンはなおさらこの映画にはキレるべきじゃないのかとも思いましたが…。


映画に限らず、面白かった−!!という感想を書くことの方が多いですが、たまにはこういう感想も残しておきたいと思います。