ドラマ「ハゲタカ」感想(再掲)

mixi日記にしか書いてなかった過去のハゲタカ関連の日記を色々サルベージ中。今回は、ドラマの時の感想。例によってやや修正加えてます。これは2007年4月2日の日記ですね。また内容古いですがご了承ください。約3年前って…もうそんな時が流れているのにビックリですよ…。


少々時間が出来たので、昨日と今日とでハゲタカをもう一度最初からぶっ通しで見直してみました。一話ずつは何度か見直ししてたんだけど、もう一度最初から通して見てみようと思い…疲れた…。

確認したかったのが、鷲津のやりたかった事がアメリカに渡ろうと決めた時から、もう一度来日した時までにブレていなかったのかという事と(ブレてなかったって結末になったのは分かるんだけども)、大木さんの「やり直したいなら、なにもしないことだよ」っていう言葉をどう解釈したもんかな〜っていう諸々を。

最初から見直してたら、伏線で、色んなシーンやら言葉が出てきて、それが後に重ねて使われてるの再発見したりして面白い。分かり易いのが旅館で西野母が手を合わせていた神棚、三葉で飯島が手を合わせていた神棚、治がハイパークリエーションで手を合わせていた神棚。ちなみに旅館はその後買収されたし、三葉もサンデー買収に結果的には失敗したし(住倉とは合併して飯島自身は副頭取まで昇格してるけど)、HCの顛末もアレだし、神頼みはどれも成功していない皮肉。対照的なのが、テクスン接触に際して鷲津が大木さんのお墓参りに行くところ、EBOに際して鷲津と芝野でお墓参りに行くところと、物語ラストのシーン。神様じゃなくて人に手を合わせに行った時の結果っていうのはちょっと面白いかも。考えすぎ?

他にも、1話を見返して、旅館の息子時代の治の「金に使われたら終わり」という言葉を聞くと、その後のプールサイドで「俺もあんたも、もうお仕舞いだな」という同じ治の言葉がオーバーラップしてきて、これも悲しくなる。この辺は西野の出発点と、鷲津の出発点が似ている様で決定的に違うところで、それがプールサイドのあのシーンで明確になるし、物語のテーマ(鷲津がやりたかったこと)が分かる。

治は、父親が経営者には向いていないという問題に気づいていたのに、2億が用意出来なかった事の方に重きが行ってしまったかな?父親の姿を見て金に使われたら終わりだという強迫観念みたいなのが強かったのかも。治はお金の裏側にあるものを見ていなくて、モノとしか見ていかなったし、それがなくなったら終わりだと思っていた。

鷲津の方は、200万が用意出来なくて首を吊った三島の親父さんの事件が出発点で、野球場で芝野に「200万があれば親父さんは死なずに済んだ」的な言い方をしているけど、それは治の様に「金があれば」のみの発想ではなく、生き物である会社をちゃんと育てて運営していけば、という思いから。鷲津の思いはブレてないよね。3話のラストで、企業再生にあたって銀行員であることの限界を悟った芝野に「あなたは私だ」と声をかけたのも、芝野の本心と自分の本心が同じであると気づいてたからだし。芝野は鷲津の「買い叩く」の言葉のフィルターで、最終話近くまで鷲津の本心に気づかなかったけど…。自分が、帰れ!て言われたシーンでようやく11年前の鷲津の出発点に重なって…て…遅いわ〜!このエリートがっ!

鷲津のやりたかった事は、教会で治に言った「金持ちになれって事じゃない、きちんと事業をしろということだ」の台詞でもわかる…。そんでもってこのシーンは鷲津が父親のようだし、治が本当に子供の様で、役者はすごいな〜と思った。

大木さんの「やり直したかったら…」の台詞は、自分自身に向けて言った言葉ともとれるし、中途半端に手を加えるなら、やらない方がマシだともとれるけど、私は覆水盆に返らず的な意味として捉えたんだけど、どうなんだろう。副題であるRoad to rebirthもそうだけど、再生、フェニックスと、生まれ変わるというキーワードが何度も出てくる。三島の親父さん、西野の親父さん、大木さん自身、その他諸々、なくなったものや人は帰ってこない。大木さんのいう「やり直す」は再生の方の意味じゃなくて、「巻き戻す」の意味合いかなぁ、と思ってました。鷲津は(気持ちは原点に立ち返る事があっても)失ったもの直接を取り戻すのではなくて、自らが再生していくというやり方で、企業は成長するし生き続けるという事をやりたかったのかなと。そう考えると個人的にはしっくりくるんだけど、どうかなぁ。

後、龍平オタとしての余談ですが、個人的に圧巻だ!と思ったのが、やっぱりプールサイドの例のシーンで、カバンの中から落ちた拳銃を見つめる一瞬のシーン。あの狂気の縁を彷徨ってる目線が、スゴイ。あんなに演技が出来る様になっているとは!南朋さんが素晴らしいのは言うまでもなく…三葉ぺーぺー時代、ホライズンでのメガネキャラ、メガネオフ時、演じ分けすぎで、恐ろしい…。1話見たとき「ん?この人でいいの?」と思ってごめんなさい。「撃てよ」のシーンだって、あの一言と表情だけで(勿論同時に龍平の表情も上手かった)、二人の違い、治が自分との覚悟の違いを、絶望をほんの1シーンで感じさせるところが一目瞭然、素晴らしい。

前半が外資ファンドがばしばし買い叩く〜な感じだったのに、後半に入って急に人情話に…という人がいるけど、やっぱり最初から見ても後半に繋がる話で一環してるしバランスがとれてると思うけどな。「中延さん、コピー機入れて」のシーン好きだけど…!


最後の最後のシーンはホントにヨカッタなぁ、エミリブロンテの詞のEDテーマが流れて、ようやく晴れた空の下で、鷲津が三島製作所にやっと帰ってきたんだ。あそこのシーン何回見ても泣いちゃう。書いててもう思い出し泣き。ほんとにいいドラマでした。