大河ドラマ「龍馬伝」第28回 武市の夢

武市先生、退場です。お疲れ様でした。いつも通りこの日記はほぼ武市さんについてしか書いてません…。南朋さん自身も思い入れがあるであろう、牢屋での龍馬、弥太郎との3人のシーン。それから切腹のシーン。いずれも、役者さんたちは熱演であったと思います。やりきった感は伝わってきたので、それでいいじゃないか、とも思うのですが、やはり残念さはどうしても残ってしまった。死に際は良かったけど、生きていた時の武市先生が、もっとこうあれば…との思いは出てきてしまいました。

物議を醸しそうな、容堂自らが牢獄を訪ねて来るシーン。あり得るかあり得ないかといえば、あり得ないですけどね。本当にこれが「武市の夢」だったていうオチなんじゃないかと、ちょっと思ってしまいましたが。ただこのシーン、山内容堂＆武市半平太として見なければ良いシーンだったと思います。いやそれアカンやん！という意見はとりあえず置いておいて…。何せ近藤さんが上手すぎました。お酒の力を借りてではあったけれど、自分の中の一番ナイーブな部分（徳川家を見限れない）を一部さらけ出しながら、それでも己の信念は崩さず、思想も変えず、。そして武市の話を聞いた上で切腹を言い渡す。うーん、近藤さんの演技で、これまでヒール気味に描かれていた容堂をここまで魅了的に………

あれ？と、そこで気付いてしまったのですね。容堂と武市が似ていると容堂に言わせるなら、何故この容堂のような人物描写を、武市半平太で出来なかったのか。

武市半平太のやってきた仕事についての評価が、今回の大河で全く評価されていないのは、武市さんの仕事を評価する＝人斬り（暗殺）の正当化となるので、真っ向からはそういう脚本を描けないからだろう、とは以前の日記で書きましたが、それなら上士下士の差別を徹底的に行った容堂も、どちらかというと脚本的には評価する形で描きにくいキャラだったのではないか。でも、ヒール寄りの姿勢を貫き通させて、最後に葛藤を見せる。

武市の描き方も、まさにそれが似合ったのではないかなぁ。龍馬・弥太郎・武市の3人を前半の軸にする、とのことでしたが、だからといって、最後で三人をあんなに仲良しこよしのように描く必要は無かったと私は思うのです。どのみち龍馬と武市とは途中で道を違えているのだから（土佐を良くしたいという思いは一緒だったにせよ）、武市というキャラを、主人公とは距離を置いた位置に据えたままにして、そのまま信念を貫き通した方が、武市半平太の生涯を魅力的に描けたのではないか…。龍馬が受け継ぐのは、武市の「信念」で、それを龍馬が自分のやり方で果たすというのなら。そういう描き方も出来たはずなのでは、と、今回の容堂を見て思わずにはいられませんでした。

今回実感したのは、「武市半平太」というキャラは、龍馬の側に置くと良い面が死んでしまう。龍馬の人間的というか「主人公的」な部分に相反することもやった武市なので、どうしてもそこだけが強調されてしまう。私は「武市半平太」として見るなら、今回の切腹シーンよりも、京都での龍馬との別れのシーンの方が、ずっと良いシーンであったと思うのです。「龍馬の側に置いて描くと、武市というキャラの良さが死ぬ」というのは、まさに「別れのシーンが良かった」ことが証明していると思うのですが…。

あの別れから切腹までを引っ張りすぎたというのはありますね。回数の関係上しょうがなかったのでしょうが。獄中での奮闘を描くこともなかったので、結果的にブレまくる武市を印象付けただけっぽくなってしまったのはミスだったかな。富さんとの別れの朝餉のシーンはとても良かったのですが、あれは富さんの演技が良かったので、相対的に武市というキャラが立ったのであると私は思っています。（南朋さんの演技が悪かったわけではなく、さらに奥貫さんの演技が良かったなーという話ですね）奥貫さんの富さんは、全て、パーフェクトであったと思います！

大河ドラマの武市さんは、仕事面での評価が描かれない、フォローは人間性のみ、でもとってつけたような武士らしさを出そうとする、という破綻しかかったバランスの悪いキャラを、大森南朋の演技でなんとかもたせて、最後の切腹の勢いで強引にシメた！という印象になってしまったのが、残念でなりません。ただその絶妙の「何だこの人」感がアンテナにひっかかって、「武市半平太気になる…！」と思った人もいるんではないかな？怪我の功名的な…いいのか悪いのか…。でも最後の切腹シーン、京都の別れの方が良かった、とは描きましたが、「大森さんの武市への思い」が画面から伝わってきたシーンではあったと思います。ちゃんと三文字（四本いったみたいに見えましたが）→前のめりに倒れる→首は落ちていない……という、史実通りの切腹シーンを再現してくれたことは、評価！

一刀目のあとの「待ちや！！」は、お腹に刀刺さってんのにあんな声でねーんじゃねーの…とは思いつつ(笑)。

さて、次からは第三部。予告を見る限り、なんもやってないやん〜と心配していた（？）龍馬が、武市さんを亡くし、想いを引き継いぎ成長していくのは、やっとここからですかね。予告はいいとこのダイジェストなので過大な期待はおさえつつも…。しかし、アランとクラリスが同じ画面で並んでると、ハゲタカやん！！と思って、笑ってしまうわ…。